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瑠璃のかなたに

塩野七生のエッセイ「イタリアからの手紙」を読んで

私は塩野七生さんの作品のほとんどを読みましたし、今「ローマ人の物語」5回目の通読を終えようとしているところです。

以前に私は塩野七生さんにノーベル賞をあげてほしいと私の通っているイタリア語教室の伊作文で発表したことがあります。その時は未だひいきの引き倒しで、私自身、彼女のフアンであるための身びいきだという後ろめたさを持って冗談のつもりで発表していましたが、最近何度も読みかけては中断していた「イタリアからの手紙」を今回読みはじめて一気に読んでしまいました。何度もよみかけて中断していたのは本の書き出し部分にいきなり、ヴェネト通り、ナツィオナーレ通り、ディオクレティアヌス浴場、骸骨寺など私の知らない名称がたくさん出てきて、イメージが湧かなかったことが主な原因でした。その後イタリアの歴史に触れ、イタリア旅行を何度かするうちにイタリア関係の書物を読みながらイメージを頭に浮かべることが出来るようになった事が「イタリアからの手紙」を十数年ぶりに本棚から取り出す気持ちを起こさせるきっかけになりました。彼女は1937年生まれで私と同年生まれなので余計にひいき目にみたい気持ちになりますが、今度ばかりは確信を持って言えます。彼女は本物の逸材です。私が選考委員なら絶対にノーベル賞候補に推します。

「イタリアからの手紙」は平成9年、彼女の60才の時に出版された作品です。当然それ以前に書かれたものでしょう。読後感はエッセイ集としても一流のものだと思いました。彼女の代表作「ローマ人の物語」は今度中国語に翻訳される?されたそうです。私はいつかきっと塩野七生さんがノーベル賞を受賞される日が来ることを信じています。古今東西これほど長きにわたるローマ史をこれほど臨場感あふれる作品に仕上げた人はいません。塩野さんの本の中では、そこここにちりばめられた同時代の地図、ローマ人の作り上げたすばらしい技術作品や戦闘隊形の図解、皇帝や歴史上の重要人物のもっとも特徴的な彫像を探し出して掲載など、イメージを膨らませるのに役立つ貴重な資料が目白押しです。後世にまで残すべき作品だと思います。どの著述も現地を丹念に視察し、多岐にわたる資料を集め、多くの人と交流しながら書き進んだ様子が忍ばれます。

「イタリアからの手紙」で印象に特に残った作品について2,3上げてみます。今は引退していますが、以前私が小児科医だったことから「ある軍医候補生の手記」「村の診療所から」では、医師でもない塩野さんがこれほど新人医師の心情を描ききれていることに驚かされました。
「ナポリと女と泥棒」ではナポリの泥棒のあっぱれな仕事ぶりに塩野さん自身が感嘆したり、警察官との調書作りに日本の浴衣をわかってもらうためにマダムバタフライ風の衣服と説明して納得してもらったことなどユーモアがあって面白く思いました。
「シチリア」「マフィア」の歴史的背景はとても複雑なマフィアやシチリアの成立過程が
ますますこんがらがってしまいますがよく調べられていると感心させられました。
by pypiko | 2011-12-19 17:31 | その他