瑠璃のかなたに

ウンベルト・エーコの「薔薇の名前」の意味するもの

ウンベルト・エーコが自作のタイトルを「薔薇の名前」に込めた意味

「薔薇の名前」は紆余屈折する中世のキリスト教世界の史実をもとに歴史学者であり、文学批評家であり、「記号論」の指導的な専門家として世に認められたウンベルト・エーコがその知識を生かして作り上げた壮大な探偵小説です。

事件を解決に導くシャーロック・ホームズが、中世の姿をとったものともいわれます。

この際、シャーロック・ホームズはフランチェスコ会修道士パスカビルのグリエルモ、ベネディクト会修錬士メルクのアドソが語り手のワトソンが暗示されています。

タイトルの「薔薇の名前」は何を意味するのか少し探って見ました。

私が主に参考にしたのが手持ちの「薔薇の名前」便覧(A・J・ハフト、J・G・ホワイト、R・J・ホワイト著)です。

物語の発端はアドソがグリエルモに連れられて訪れた、北イタリアの修道院で「ヨハネの黙示録」の実現を暗示するような事件が7日間連続して起こります。二人はこれらの一連の事件の渦中に身を置きながら事件の全貌を解決することに全力を注ぎます。事件の解決は修道院の全焼でもってなされます。

アドソは「ヨハネの黙示録」の作者であるヨハネのごとく神の啓示にしたがってその全貌を記録に残すことに一生を捧げます。書き終わる頃にはっ若者が身も心も使い果たした老僧に変貌しているのでした。

ウンベルト・エーコがこの作品に込めた「薔薇の名前」の意味は最後の一説により明確にされているように思われます。

“写字室の中は冷え切っていて、親指が痛む。この手記を残そうとしているが、誰のために

なるのかわからないし何をめぐって書いているのかも、私にはもうわからない。<過ぎにし薔薇はただ名前のみ、虚しきその名が今に残れり>

ベルナール(クリュニーの)〔仏〕Bernard de Cluny (1100頃から1156)はベネデイクト会修道士、詩人。この試作品から彼の書いた1140頃に書いたラテン語の約3千行からなる長い風刺詩〔俗性の蔑視について〕(De comtempti mundi)でよく知られている。エーコはこの作品からEst ubi gloria nunc tenemus 「昨日の薔薇はただその名のみ、虚しきその名をわれは手にする」(堀越孝一訳)を借用している。


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by pypiko | 2015-08-02 10:57 | その他