瑠璃のかなたに

「薔薇の名前」

これまでにすでに10冊をくだらない数の「薔薇の名前」解説書がすでに出版されているようです。私が買い求めたものはA.Jハフト/J.G・ホワイ/R・J・ホワイト著 谷口勇訳の「薔薇の名前」便覧です。原書の名前は “the Key to the name of Rose” です。

「薔薇の名前」は別名を“アドソの黙示録”といっても良いのではと “the Key to the name of Rose” の著者たちは言っています。 


主な登場人物はパスカヴィルのウィリアム(ロジャースミス、オッカムのウイリアム、シャーロック・ホームズのよせ集め)とウイリアムに従う見習い修道士である語り手のメルクのアドソ(シャーロック・ホームズの語り手ワトソンを思わせる)の2人と忘れてならないのは事件のカギを握る最長老の修道僧アリナルドと盲目の修道僧ホルヘです。

舞台は中世の無名の大修道院で1327年11月に起きた事件です。

1327年11月の末のある美しい朝のことでした。小説の始まりは日曜日、察するところ待降節(降臨節)-典礼歴が始まり、教会がキリスト降臨を待ち望む期待の期間―の初日と思われます。

1327年のこの他ならぬ日曜日には、修道院全体がキリストの最終降臨と、たいそう恐れられていた千年王国の到来に途方もなく気にもんでいたかのようでした。

最長老の修道僧アリナルドとウイリアムとの会話で

ウイリアムの「でも千年王国は3百年も前のことだった、その時だって彼は来はしなかった・・・」の言にたいして、アリナルドは答えて「だが千年王国はキリストの死から計算するのではなくて、300年後のコンスタンティヌス大帝の寄進状からなる計算するのだよ。今が千年なのだ・・・」といいます。

以上のように、舞台は黙示録的事件がこの修道院の中で起こっても仕方がないように注意深く設定されているのです。

メルクのアドソは黙示録の著者ヨハネの化身のごとく、しばしば幻影を体験します。アドソが修道院の入り口を初めて目撃した時、彼は頭上の、「黙示録」のドラマにうっとり見とれて幻想の世界をさまよっていきます。その後も図書館の中では幻覚が起きるし、唱和中にも不吉な「神の怒り」の夢に襲われるといったようなことがしばしば起きます。

ウイリアム、アドソのほかはほとんどの登場人物は歴史上の人物だったり、当時の世相をよく反映させたものです。

エコが「黙示録」の範型にしたがって意識的に7という数にこだわって構成していることも注目されます。7日間の出来事、7つの封印、7つのラッパ、7つの徴、7つのいきどおりの鉢などです。



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by pypiko | 2015-02-22 09:11 | その他